そんな状況だから、ほとんど行っていない山梨の産地にしようと思いついた。”初詣は氏神様で”と同じで、採集
納め、採集はじめは地元の産地でだ。
思いついたのは甲府市黒平(くろべら)町にある向山(むこうやま)水晶鉱山跡だ。ここは、2002年の暮れに
雪の積もった山肌の尾根から谷を虱潰しに歩き回り、坑道や露頭そしてズリの位置を探査した思い出のフィール
ドだ。
・ 山梨県黒平向山鉱山の水晶
(Rock Crystal of Mukouyama Mine , Kurobera , Yamanashi Pref.)
この時は、水晶と武石(黄鉄鉱が風化して外形を残したまま内部がゲーテ鉱に変化したもの)を発見しただけ
だった。その後、YYコンビと訪れ、ガマ(晶洞)を開け、水晶の美晶と山梨県では珍しい砒酸塩を主とする2次
鉱物の美晶にも出会えた。
2019年10月に茨城・K兄弟を案内してここを訪れたのが最後だった。この時は黒平への林道が崖崩れで
路上に落下した大きな岩を取り除いて進むというハプニングもあった。堅い露頭を叩き続け、小さな
ガマが開き、透明な平板水晶と毒鉄鉱を採集した。
1年ぶりの訪山で、水晶ガマこそ開かなかったが「毒鉄鉱」などの2次鉱物美晶を採集でき2020年のミネラル・
ウオッチングを終えることが出来た。
( 2020年12月 体験)
(2) スコロド石【SCORODITE:Fe3+AsO42H2O】
濃い緑色、透明、斜方錐面結晶が石英の晶洞に成長している。今回採集した3ミリを超える大きな
結晶が集合する標本の表面にはガマの残留成分がコーティングされていて黒く見えるが、透過光で見ると
鮮やかな緑色に見え、”宝石級”だ。
今回も下の写真のように、柱面が発達し、放射状の『菊花状』が『球状』になったものを採集した。周囲に
点在する四角い結晶は小さな毒鉄鉱だ。
(3) 不明鉱物
2次鉱物には肉眼で鑑定するのが難しいものが多い。下の写真の球状鉱物は「菱鉄鉱」【SIDERITE:FeCO3】
にも見える。黄褐色の皮膜状の鉱物は「アーセニオシデライト/灰砒鉄石」【ARSENIOSIDERITE:
Ca2Fe3+(AsO4)3O2・3H2O】にも見える。
どちらもスコロド石と共生している。長石類が風化した白土はふんだんにあるから、カルシウム(Ca)はあり
そうだが、炭酸塩(CO3)はありそうもないのでこれらの鉱物なのか、自信がない。
産地に着いて荷物を下ろすと、手ごろな石を集めて”炉”をこしらえた。枯れ枝を集めて火をつけたが木が
湿っているのかなかなか燃え上がらない。採集標本を包むために持参した新聞1ページを丸めて火を点け、
小枝を載せると燃え上がった。太い枝を何本かくべて置いて坑道に潜った。
1、2時間露頭を叩いて休憩や食事に出てくると火はとうに消えていて最初からやり直しだ。こうして、たき火
が燃え上がったところでお湯を沸かした。
物音ひとつしない静かな山の中で、湧いたお湯でコーヒーを入れて飲んでいると下界の雑事が遠い世界の
出来事のように思えてくるから不思議だ。これがたき火の効用なのだろう。
(2)2021年 年賀状
新春に多くの石友からも年賀状をいただいた。昨年採集した標本や採集風景の写真を載せた賀状もあるが、
新型コロナウイルスの影響でほとんど採集に行けなかった人が多かったようだ。
傑作は滋賀・鮒鮨さんからの1枚で、「最近石の嗅覚なくなってきた コロナかな」だ。
返歌は、世界一周旅友の愛知・人生大学さんの一句、「3時間 待って病名『加齢』です」。
今年も明るく陽気に生きましょう。