新型コロナウイルス蔓延2年目を迎え、学校の授業などはいつも通り行われているようだが、運動会などの
イベントの実施には慎重な学校が多いようだ。
その中で、毎年鉱物の課外授業を実施している2つの学校から、相次いで「講師をお願いしたい」、との
連絡をいただき、受けることにした。
現在、ほとんど都内のマンションで暮らしていて、山梨に戻るのは切手趣味の会の例会とMH農園の手入
れ・収穫のときくらいだが、今回は私のワクチン接種に合わせて山梨に帰って準備をすることにした。
一番気になったのは、こどもたちや先生、そして父兄を案内する甲武信鉱山の貯鉱場に行くのに千曲川
の上流・梓川を渡るのだが、そこに架けておいた橋がどうなっているかだった。
万一の場合に備え”橋の修復”をするための道具や部品を持って訪れた。行って見ると
2020年に補修して置いた橋は”シッカリ”健在で、補修のための”釘一本”打つ必要がなかった。
せっかくここまで来たのだから、久しぶりに”ミネラル・ウオッチング”を楽しませていただいた。
( 2021年6月 体験 )
金(Au) 3〜4g/トン
銀(Ag) 2〜4g/トン
銅(Cu) 0.4%
「貯鉱場」には、選鉱前の富鉱と選鉱後のズリ石(廃石)が堆積している。
ここでの採集方法は次の通りだ。
@ ズリの表面採集
A ズリを掘る
B ズリ石を割る
C ズリの土砂をパンニングする。
「自然金」や「ホセ鉱A」を採集するならBかC、「日本式双晶」などは@またはA、「灰重石」はCが良い
だろう。
ここの鉱石は堅い(強靭な)ので、割るのには大きなハンマが欲しいし、眼を保護するゴーグルなども忘れ
てはならない。自然金やホセ鉱などはほとんどが小さいので、(ライト付)ルーペも必須だ。
パンニングはズリ石の表面の泥を洗い流しての採集になるので、思わぬ良品を手にすることがあり、初心
者や女性そして子どもにおすすめだ。
その名の通り、アイスランド特産の鉱物だ。
・ 北極圏をめぐる地球一周の旅 【アイスランド】
( Tour around the World & Arctic Circle 2016 , - Iceland - )
ここでは、方解石の中に緑黒色針〜細柱状結晶が入った標本も採集できる。光に透かして見ると
美しいのに最近気づいた。
結晶は「灰鉄輝石」だと思うのだが・・・・・・。
蛍石の八面体や方解石の菱面体の整った結晶は人が手を加えて作った”へき開”片であって自然の
鉱物ではないので集める価値がないと極論する人もいる。
ここでは、自然に結晶した状態の方解石を手に入れることができる。写真の結晶は一部は劈開して
いるが、全体としては薄い板状菱面体自形結晶の並行連晶だ。(一瞬、日本式双晶かと思った)
(2) 灰重石【SCHEELITE:CaWO4】
白色で、外観だけでは石英や方解石のカケラと区別が難しい。慣れると、”ギラギラ”と輝く油脂状
光沢や細かいひび割れがあるので区別できる。
比重が6.1と金属鉱物とほぼ同じで、パンニング皿に最後まで残るのでパンニングすると必ずと言って
良いくらいに採集できる。(大きさを問わなければ)
ミネラライト(紫外光)を照射すると”青白く”光るので簡単に識別できる。色が鮮やかに変化するので、
こどもたちに人気の鉱物の1つだ。
(3) 灰礬柘榴石【GROSSULAR:Ca3Al2(SiO4)3】
茶褐色透明感のある結晶が真っ白い方解石に埋もれて産出する。方解石が雨水などで自然に溶け
たり、ハンマで叩いた軟らかくて脆(もろ)い方解石が剥がれて柘榴石の結晶集合が表面に出ているもの
もある。【母岩付き結晶】
貯鉱場での「選鉱」作業で鉱石を小割りするときの衝撃で剥がれおちた【分離結晶】がパニング皿に
残る。パンニング皿に最後まで残るのは、砂〜粉状の石榴石である。
(4) 水晶(石英)【QUARTZ:SiO2】
透明〜緑色の針入り水晶(石英の結晶)が母岩付きや分離結晶として採集できる。緑の針入り水晶は
小さなものだがきれいだ。針の正体は「透緑閃石」だと思うが・・・・。
全体が方解石に埋もれ、方解石を割ったところ姿を現した水晶も面白い。いずれも、標高2,000m
にある古い坑道まで行けば”掃いて捨てる程ある”代物だが、標高1,500mの場所で楽して採集できる
のはこのレベルだ。
(5) 灰鉄輝石【HEDENBERGITE:Ca(Fe,Mg)Si2O6】
暗緑色の柱状で晶洞(母岩の空洞)にへばりついた形で産出する。山の上のズリや露頭で採集できる
時には10センチを超す大きな結晶はできた後に鉱液(熱水?)の浸入によってか結晶面が侵され
”骨粗しょう症”状態になったものが多い。ここにあるものも、ポツポツと虫食い状になっているのは
灰(カルシウム:Ca)を含む鉱物では避けられないのだろうか。
前回は湯沼鉱泉に一泊しての授業だった。中に熱心な生徒がいて、夜遅くまで採集した標本の鑑定に
お付き合いしたことが懐かしく思い出される。
雨が降り続いた週末日曜日の下見は雨を覚悟していたが、1時間ほど貯鉱場にいる間はほとんど雨は
降らず、”晴れ男”健在で、あとは本番を待つばかりだ。