この時まで、シンガポールは、関連会社の指導で1週間程度、何回か滞在したり、マレーシアにある
関連会社への出張の行き帰りに乗り継ぎや販売部門の知人への挨拶などで訪れたことがあり、”目を
つぶっても歩ける”と思いこんでいた。
そんなわけで、シンガポールではオプショナル・ツアーはとらずに、フリーで街を歩き回ることにしていた。
シンガポールの街は歩き尽くしているので、2000年ごろに経験した「マレー鉄道でマレーシアへの旅』を
計画していた。
この話を列車の旅が好きな『博多のあねご』にすると、「行ってみたい」ということになり、同行すること
になった。さらに、Aさんとその知り合いのIさんが一緒に行くことになったのは前日の夕刻とその日の朝だ
った。
船からシンガポールの風景を見るのは初めてだったが、この15年の間に、近代化が一段と進んだような
印象だった。
地下鉄の駅の前で、タクシーをつかまえて乗り込み、「シンガポール駅まで」と頼んだが、運転手は
”キョトン”としている。「マレーシアまで行きたい」と伝えると、一層不思議そうな顔をした。
話が通じないようなので、とりあえずタクシーを降りて、地下鉄の駅に行く。「マレー鉄道に乗りたい」と
話すと、何と「5年前(2011年)に廃線になった」という答えが返ってきた。
こうして、『マレー鉄道でマレーシアへの旅』は早々に挫折してしまった。
港近くの地下鉄駅の窓口で、「ワンディ・パスと乗るたびに切符を買うのとどちらが得か」聞いてみると、
「何回乗り降りするか」、と聞き返されたので「3、4回」、と答えるとワンディ・パスを勧めてくれた。
値段は18シンガポール・ドル(1,440円)だが、最後にカードを返却すると10シンガポール・ドル(800円)
が戻ってくるので、実質640円でシンガポール中の鉄道・バスがすべて乗り放題になる。
地下鉄、高架鉄道、そしてモノレールと各種の鉄道が市街地全体をカバーしている。15年前に来た
時にも地下鉄はあったのだが、放射状に走っていただけで、今のような環状線はなかったと記憶している。
甥っ子に「乗り鉄君」がいるAさんは、路線が変わると変わる軌道方式・車両を写真に収めようと興奮
気味だった。
最後にバスに乗ってシンガポールの出国窓口に並んだ。しかし、並んだ列はなかなか前に進まない。
シンガポールの出国審査は厳格なようだ。案の定、われわれの列の前の方に並んでいたインド系と思
われる青年が係官に付き添われて別室に連れていかれた。
それでも列は遅々として前に進まない。やがて、1人の中国系と思しき男が怒鳴りだした。早口の現
地語なので意味は解らないが、「早くしろ!!」と怒鳴っているようだ。このことがあってから、心なしか
列の進み方が早くなったような気がした。日本人だけだったら、”羊のように”、おとなしく待っているんだ
ろうなと、国民性の違いを否が応でも思い知らされる。
われわれが日本人旅行者だと知ると係官もすんなりとスタンプを押して通してくれた。わずか4時間足
らずのシンガポールから出国だ。
バスに乗ってジョホール水道を渡る。今ではシンガポールとマレーシアは地続きになっていて、自動車で
簡単に行き来できるようになっている。
水道を渡り切るとマレーシア側の入国審査が待っている。マレーシアは麻薬類の持ち込みには厳罰で
臨んでいる国の一つで、多量に持ち込んでいるのを見つかると死刑が待っている。国交関係を慮って
死刑は免れたものの”無期懲役”に服している日本人が現在もいるはずだ。見るからに旅行者然とした
われわれは、スンナリと通ることができた。
入国管理のゲートを出て時計を見ると13時を回っていた。何をするにも、まずは”腹ごしらえ”だ。通り
かかった青年に「食事ができるところがあるか」と聞くと親切にも先に立って案内してくれた。15年前は、
古びた木造の市場だったような場所が近代的なビルのショッピングモールに生まれ変わっていて、15年の
月日の流れを感じさせられる。
その一角に現地の人たちが立ち寄るような中華風食堂(レストランとは呼べそうもない)を発見し、
メニューの料理写真をみるとわれわれの口にも合いそうなのでここに入ることにした。
量も多そうなので、注文したものを”シェア”して食べることにする。この食事スタイルは、旅の間中続く
ことになる。
出てきた料理は、香草などがついていたりするが、日本人の口にも合うもので、気が付けば完食して
いた。店のマスター(、と思ったら店の常連客だと後で知る)がわれわれが日本人と知って何かと声を掛
けてくる。しまいには、店の従業員も巻き込んで記念写真撮影となった。
お腹も一杯になったところで、この日のミッションの一つ、「ジョホール郵便局で紀念押印」だ。日本から
持ってきたマレーシア切手を貼った絵葉書と封筒にジョホール郵便局で消印を押してもらおうという算段
だった。
郵便局は事前調査すると1キロくらいの距離だが、日差しが強くしかも4人いるので、タクシーで行くの
が良いだろうということでタクシー乗り場に行き値段を交渉すると10リンギッド(280円)だという。タクシーに
乗り込んで、用が済むまで待っていてもらうことにすると料金は20リンギッド(560円)だとなった。
ものの5分も走ると郵便局だ。タクシーを降りて局に行くと何だか変だ。人っ子ひとりいない感じで、静
まり帰っている。数少ない通行人をつかまえて聞いてみると、「今日は金曜日だから、郵便局は午後は
休みだ」という。『あねご』の方を見ると”またか”という顔で失笑している。
(これで、これから先10日くらいは酒の肴にされそうだ。トホホ・・・・・)
局が開いていなければ、表にある郵便ポストに投函していくしかない。
マレーシアに行った目的の一つが「果物の王様・ドリアン」を食べることにあったのだが、時期的に早い
せいか街中では見かけなかった。シンガポールに戻ってスイーツの店をのぞくと、「ドリアン・アイスクリーム」
を売っていた。1ケ8シンガポールドル(640円)と結構な値段だったが、これを代わりに食べてみた。ドリア
ン独特の一瞬息が止まりそうなアンモニア臭のするアイスクリームで『あねご』の口には合わなかったが、
3人はペロリと食べてしまった。
この店の一隅に「FREE Wi-Fi」の表示を見つけ、背負ってきたPCを出してトライしてみる。パスワードを
店員に聞いて入力すると、簡単につながって、船と違って接続時間を気にすることなくインターネットを
楽しむことができた。
この5日後、「宝石探し」で訪れるスリランカのS氏にも確認のメールを無料で送ることができた。
この後は、ご一緒した皆さんの行きたいところに行ってみることになった。まずは、最近できた屋上に
特異な形の展望台を載せたビルだ。
シンガポールで買わなけれなばならない品の1つが、パンニング皿の代わりになるプラスチックでできた
トレイか皿だった。
シンガポールにも日本の「百均」に相当する店があると聞いていたので、ここで買おうと思っていた。通
りかかった若い女性に「ダイソー」がどこか尋ねると先に立って案内してくれた。彼女は一度日本に行っ
たことがあり、また行ってみたいと歩きながら話してくれた。マレーシアの青年と言いシンガポールの女性と
言い、困っている外国人旅行者には親切だ。
10分近く歩いて、「ダイソー」に着いた。そこは、「2ドル(約160円)」ショップだから、日本の「百均」よ
りも価格が高い感じだ。
店内を歩き回ってパンニング皿の代わりになりそうなトレイと皿を17枚ほど購入して店を後にした。
シンガポール名物の海鮮料理を食べようとレストランに入ってみたが、週末というせいか満席で待ち時
間は1時間以上だという。すでに19時を過ぎ、食事をしていると帰船リミットの21時に間に合いそうにな
いので、このまま船に帰ることにした。
船に帰り着いてシャワーを浴びた後、21時から9階の居酒屋「波へい」で打ち上げ(反省会?)を開く
ことになった。これが、われわれの上陸日の恒例行事になりつつある。
22日、23日と2日間ベネズエラに上陸する予定だが、政情不安が伝えられ首都・カラカスへの旅
行は制限されそうだ。